このページでわかること
- 「ランジェリー」はフランス語のリネンから。もとは肌着全般を指す言葉だったこと
- シュミーズ、19世紀の重ね着、1920年代の一体型、1930年代の絹のスリップへの移り変わり
- レーヨン・ナイロンと機械レースが、装う下着を身近にしたこと
- 日本で洋装の下着が広まり、「下着ブーム」が起きるまで
もくじ
- 「ランジェリー」はリネンを指す言葉だった
- 肌にいちばん近い一枚、シュミーズ
- 何枚も重ねた、19世紀の下着
- 室内の装いと、1920年代の軽やかな一体型
- 絹のスリップと、レーヨン・ナイロンの登場
- レースが身近になった、機械レースの発達
- ガーターベルトから「表に着る」ランジェリーへ
- 日本でのランジェリーの広がり
- よくある質問
「ランジェリー」はリネンを指す言葉だった
ランジェリーは、フランス語でリネン(亜麻布)を意味する linge から生まれた言葉です。もとは麻の布やリネン類そのもの、それを扱う店を指していました。
昔の肌着の多くは、洗いやすく丈夫な麻で作られていました。そのため「リネン類」を指す言葉が、やがて肌に着るもの全体を表すようになります。英語では19世紀になると、女性用の下着を指す言葉として使われるようになりました。下着をそのまま口にするのがはばかられた時代に、やわらかな言い換えとして受け入れられたともいわれます。
日本の辞書では、ランジェリーは「レースや刺繍で飾った女性用の下着や、薄手の部屋着」と説明されています。洋装の下着を、からだを支えるファンデーション、肌着としてのアンダーウェア、そして装いを楽しむランジェリーの3つに分ける考え方もあります。ブラジャーやショーツの歴史はレディース下着の歴史で紹介しているので、この記事では、その上に重ねて楽しむランジェリーの歩みを中心にたどります。
肌にいちばん近い一枚、シュミーズ
ランジェリーの原点といえるのが、シュミーズです。中世から19世紀の終わりまで、男女ともに肌に直接着た、袖のあるシャツのような肌着でした。
名前はラテン語で「麻のシャツ」を意味する言葉に由来します。汗や皮脂を受け止めて上着を汚れから守る役目があり、白い麻のシュミーズは清潔さのしるしでもありました。男性用はのちにワイシャツへと形を変え、女性用は下着として受け継がれていきます。
18世紀の終わりには、薄い木綿で作られたシュミーズのようなドレスが流行します。1783年には、王妃マリー・アントワネットがこの装いで描かれた肖像画が「下着のようだ」と批判され、展示から外されるという出来事もありました。肌着と服の境目は、この頃から少しずつゆらぎはじめていたのです。
何枚も重ねた、19世紀の下着
19世紀の女性は、シュミーズの上にドロワーズ・ペチコート・コルセット・コルセットカバーなどを重ねて着ていました。ふくらんだスカートの形を保つため、下着の枚数も構造も増えていきます。
ドロワーズは脚を包む下ばきで、大きく広がるスカートの下で脚を守るものとして広まりました。ペチコートは、もとはスカートそのものを指す言葉でしたが、19世紀にはスカートの形を整える下着のスカートを指すようになります。コルセットの上には袖のない胴着を着ました。これはコルセットカバーと呼ばれ、のちのキャミソールにつながる形です。
19世紀の前半の下着は白い木綿が中心で、控えめなものでした。後半になると色や飾りが増え、レースやフリルで飾ったシュミーズも作られるようになります。19世紀の終わりには、シュミーズとドロワーズを一続きにした「コンビネーション」も登場しました。下着は、見えないところで装いを楽しむものへと変わりはじめます。
室内の装いと、1920年代の軽やかな一体型
19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて、くつろぐための装いと、動きやすい一体型の下着が生まれました。
1870年代に英国とフランスで生まれたティーガウンは、家で過ごすための、ゆったりとしたガウンです。来客を迎えることもできたため、レースやシフォンで華やかに仕立てたものが多く作られました。「コルセットを外して着た」と言われることもありますが、実際には内側に体に沿う構造があり、コルセットの上に着たものもあったと考えられています。同じ頃、ゆったりとしたワンピース型の部屋着や寝間着としてネグリジェも広まりました。
1920年代になると、ほっそりとした若々しいシルエットが好まれ、下着も一気に簡素になります。キャミソールと下ばきをひとつにしたキャミニッカーズや、足を入れて着るステップイン、のちにテディと呼ばれる一体型の下着が登場しました。何枚も重ねる必要がなくなり、軽やかに装える下着の時代が始まります。
絹のスリップと、レーヨン・ナイロンの登場
1930年代には体の曲線に沿う絹のスリップが作られ、その後のレーヨンやナイロンの登場で、なめらかな下着がより身近になりました。
1930年代のドレスは、布をななめに裁つバイアスカットで、体に沿って流れるようなシルエットが好まれました。その下に着るスリップも、絹のクレープやシフォンをバイアスに裁った、床まで届く長さのものが作られています。こうしたスリップは、いまも海外の美術館に残されています。20世紀に下着が簡素になると、シュミーズの役目はスリップが兼ねるようになりました。
素材の変化も大きな出来事でした。絹のような風合いを持つ最初の化学繊維のレーヨンは「人造絹糸」と呼ばれ、1920年代後半には肌ざわりが改良されて、手ごろで色の豊富な下着を広めました。続いて登場したナイロンは、戦後になると下着やナイトウェアにも使われるようになります。
1950年代には、ふくらんだスカートの下にペチコートを重ねる装いがふたたび流行しました。腰までの短い丈で、フリルやリボンで飾ったナイティ、ベビードールもこの頃に広まります。ベビードールという名前は1956年のアメリカ映画から広まったといわれますが、確かな記録はありません。短い丈のナイティそのものは、1940年代の布不足の中でアメリカで考え出されたとされています。
レースが身近になった、機械レースの発達
ランジェリーに欠かせないレースが広く使われるようになったのは、19世紀に機械でレースを作れるようになったからです。
それまでのレースは、針や糸巻きを使って人の手で作るもので、とても高価でした。19世紀の初めに英国で、糸をより合わせて網目を作る機械が考え出され、1810年代に現在のリバーレースの機械の原型が生まれます。1816年にはこの機械がフランス北部の港町カレーに伝わり、カレーは20世紀の初めにかけて機械レースの一大産地となりました。19世紀半ばには、柄そのものも機械で作れるようになっています。
機械レースのおかげで、かつては一部の人のものだったレースが、多くの人の下着を飾れるようになりました。いまもリバーレースは、手作業のレースに近い繊細さを持つ素材として、ランジェリーに使われています。網目の薄い生地のチュールも、レースと組み合わせてよく使われる素材です。
ガーターベルトから「表に着る」ランジェリーへ
1960年代以降、ランジェリーは隠すための下着から、ファッションとして見せることもある装いへと役割を広げていきました。
ストッキングを吊って留めるガーターベルトは、長く日常の下着でした。1960年代に手ごろなパンティストッキングが広まると、日常で使う人は減っていきます。一方で、ランジェリーとして装いを楽しむアイテムとして選ばれ続けています。
ランジェリーの見た目を服のデザインに取り入れる試みは、それ以前からありました。1980年代には「下着を表に着る」ファッションが大きく注目され、1990年代には、スリップの形をそのまま生かしたスリップドレスが流行します。肌着から始まったランジェリーは、服と下着の境目を行き来する存在になりました。
日本でのランジェリーの広がり
日本で洋装の下着が一般的になったのは第二次世界大戦の後で、1950年代半ばには色やデザインを楽しむ「下着ブーム」が起きました。
日本でも洋装の下着が着られはじめたのは1920年代ですが、多くの人に広まったのは戦後のことです。ペチコートやシュミーズといった言葉は明治時代から使われていましたが、日常の装いとして定着したのは、洋服が当たり前になってからでした。1951年には国内でナイロンの本格的な生産が始まり、なめらかな化学繊維の下着が身近になっていきます。
1955年ごろには、女性の下着を自ら企画して作るデザイナーが現れ、色とりどりの下着を次々に送り出して「下着ブーム」のきっかけをつくりました。シュミーズはやがてスリップに置き換わり、1965年ごろには肩ひもがずれにくいブラスリップも定着します。現在は、下着全般をランジェリーと呼ぶことも増えています。
- 中世〜19世紀男女が麻のシュミーズを肌に直接着る
- 1783年シュミーズ風のドレス姿の王妃の肖像画が「下着のよう」と批判される
- 1810年代英国でリバーレースの機械の原型が生まれる
- 1816年レースの機械がフランス・カレーに伝わる
- 19世紀ドロワーズ・ペチコート・コルセットカバーを重ねて着る
- 1870年代家で過ごすための装い、ティーガウンが生まれる
- 1920年代キャミニッカーズやテディなど、一体型の下着が登場
- 1930年代バイアスに裁った絹のスリップが作られる
- 1950年代ペチコートの重ね着が流行し、ベビードールが広まる
- 日本1951年国内でナイロンの本格的な生産が始まる
- 日本1955年ごろ色やデザインを楽しむ「下着ブーム」が起きる
- 1960年代パンティストッキングの普及で、ガーターベルトを日常で使う人が減る
- 1980〜90年代「下着を表に着る」ファッションが注目され、スリップドレスが流行する
歴史から見る、いまのランジェリーの楽しみ方
- リネンの肌着から始まったランジェリーは、肌ざわりのよさが原点。素材を選ぶ楽しみがあります
- キャミソールやスリップは、服のすべりをよくしたり、透けを抑えたりする実用の下着でもあります
- ベビードールやガーターベルトは、装いそのものを楽しむためのアイテムとして続いています
種類ごとの特徴や素材、お手入れのポイントはランジェリーの種類と選び方で紹介しています。
よくある質問
ランジェリーの語源は?
フランス語の linge(リネン・亜麻布)に由来します。もとは麻の布やリネン類、それを扱う店を指す言葉で、英語では19世紀に女性用の下着を指す言葉として使われるようになりました。日本の辞書では「レースや刺繍で飾った女性用の下着や、薄手の部屋着」と説明されています。
ベビードールの名前の由来は?
1956年のアメリカ映画『ベビイドール』で主人公が着た短い丈のナイティから広まった、といわれています。ただし確かな記録は見つかっておらず、短い丈のナイティ自体はそれより前の1940年代にアメリカで作られていたとされます。
スリップとシュミーズはどう違いますか?
シュミーズは中世から19世紀まで男女が肌に直接着た、袖のあるシャツのような肌着です。スリップは胸からひざ上までを覆い、肩ひもでつる下着で、20世紀に下着が簡素になる中でシュミーズの役目を引き継ぎました。
ガーターベルトは今も使われていますか?
使われています。1960年代にパンティストッキングが広まってからは日常で使う人は減りましたが、ストッキングを留める本来の使い方のほか、装いを楽しむランジェリーのひとつとして選ばれています。
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