このページでわかること
- 下着の歴史でよく聞く16の話を「本当」「半分本当」「確かめられない」「誤りとされる」で判定
- ブラジャー・ふんどし・ズロース・靴下・ストッキングの有名エピソードの実際
- 俗説が生まれやすい理由と、歴史の話を楽しむときのコツ
もくじ
- 判定の見方
- ブラジャー・女性下着の話
- 男性下着の話
- 日本の下着の話
- 靴下・ストッキングの話
- ルームウェアの話
- 俗説が生まれやすい理由と、楽しみ方
- よくある質問
判定の見方
この記事では、それぞれの話を次の4つに分けています。歴史の話は、資料がある部分とない部分が混ざっていることが多いもの。「確かめられない」は「うそ」ではなく、「裏付けが見つかっていない」という意味です。
- 本当博物館・百科事典・特許の原本などで確認できる
- 半分本当土台は事実だが、言い方が大げさだったり一部が違ったりする
- 確かめられない言い伝えや二次的な資料だけで、裏付けが見つからない
- 誤りとされる資料から、事実と違うことがわかっている
ブラジャー・女性下着の話
「ブラジャーは1914年、アメリカで世界で初めて発明された」
半分本当
1914年にアメリカで取得された特許は、2枚の布を組み合わせて胸を包む、近代的なブラジャーの原型として最も知られたものです。ただ「世界初」とは言えません。それより前の1890年代にも胸を支える下着の特許があり、オーストリアの城からは15世紀のものとされるカップ付きの下着も見つかっています。「最も有名な原型」と覚えておくのが正確です。
「その特許は、のちに1,500ドルで売られた」
確かめられない
特許が下着メーカーに譲られたこと自体はよく知られていますが、金額は紹介記事などの二次的な資料で語られているもので、元の記録までは確かめられていません。「〜といわれている」くらいで楽しむのがよさそうです。
「1968年、女性解放運動の参加者たちがブラジャーを燃やした」
誤りとされる
アメリカのミス・コンテスト会場の外で行われた抗議で、ブラジャーなどを「自由のゴミ箱」に投げ入れたのが実際の出来事とされています。燃やす計画が報じられたことなどから「ブラを燃やした」というイメージが広まりましたが、その場で燃やしてはいなかったというのが定説です。
男性下着の話
「ツタンカーメンは145枚のふんどしと一緒に埋葬された」
半分本当
古代エジプトのツタンカーメン王の墓から、腰に巻く布(腰布)が大量に見つかったのは事実です。ただし、所蔵品を紹介する博物館の資料では「140枚を超える」とされていて、「145枚」という数字は確認できません。また、日本の「ふんどし」と同じものではなく、腰に巻く三角形の布です。
「ユニオンスーツ(上下つなぎの肌着)は、男性用の下着として生まれた」
誤りとされる
西部劇などで男性が着ているイメージが強い上下つなぎの肌着ですが、もとは女性の服装改革のなかで、きついコルセットに代わるものとして考えられ、1868年に特許が取られています。男性の定番になったのは、その後のことです。
「ブリーフは1935年にアメリカで世界で初めて発売された」
半分本当
1935年1月にアメリカで、股前がY字に重なったブリーフが発売されたことは確かです。ただ「世界初」というのは発売した会社による説明で、ほかの資料で裏付けられたものではありません。
「トランクスは、第二次世界大戦で兵士に支給されて広まった」
確かめられない
海外の紹介記事などで見かける話ですが、軍の支給記録などの裏付けは見つかっていません。戦争をきっかけに衣類の習慣が変わった例は多いので「ありそうな話」ではありますが、現時点では言い伝えの一つです。
日本の下着の話
「越中ふんどしの名前は、越中守だった戦国武将に由来する」
確かめられない
「越中守(えっちゅうのかみ)」を名乗った武将が考えたから、という説が知られていますが、ほかにも複数の説があり、辞典でも「確かではない」とされています。名前の由来をめぐる話は、いくつかの説を並べて楽しむのがおすすめです。
「明治時代の徴兵制で、越中ふんどしが全国に広まった」
確かめられない
軍隊で支給されたことで広まった、という話はよく聞きますが、それを示す一次資料は確認できていません。軍での生活が衣類の習慣に影響したこと自体はありえますが、「徴兵制で広まった」と言い切れる根拠は今のところ見つかっていません。
「ステテコの名前は、明治の落語家の『すててこ踊り』から」
半分本当
明治10年代に寄席で評判になった「すててこ踊り」に由来する、というのが最もよく知られた説です。ただ、ステテコという言葉はそれ以前からあったという見方もあり、決着はついていません。「有力な説」として紹介するのがちょうどよい距離感です。
「1932年の白木屋火災で、裾を押さえた女性たちが墜落し、それをきっかけにズロースが広まった」
確かめられない
東京・日本橋の百貨店、白木屋で火災が起き、14人が亡くなったことは事実です。一方で「着物の裾を気にして綱から手を離した」という話は、当時の店の関係者の談話から広まったもので、研究者からは作り話の可能性が高いと指摘されています。百科事典にはこの火災を普及のきっかけの一つとする記述も残っているため、「よく語られてきたが、史実かどうかは疑わしい話」として受け止めるのがよいでしょう。日本で洋装の下着が広まった流れは、日本の下着の歴史で紹介しています。
靴下・ストッキングの話
「水戸黄門こと徳川光圀が、日本で初めて靴下を履いた」
半分本当
水戸徳川家に、17世紀後半のものとされる木綿の長靴下が伝わっているのは事実で、国内に残る最も古い部類の靴下とされています。ただ、それを光圀が履いた「日本で最初の人」だったかどうかは確かめようがありません。「古い靴下が水戸徳川家に伝わっている」までが確かな部分です。
「ナイロンストッキングは、ニューヨーク万博で初めてお披露目された」
誤りとされる
ナイロンのストッキングが一般の人に初めて公開されたのは、1939年2月、サンフランシスコで開かれた国際博覧会とされています。ニューヨーク万博での展示はその後です。その後、1940年5月15日にアメリカ全土で一斉に発売され、大きな話題になりました。
「パンティストッキングは、ひとりの男性が発明した」
半分本当
1959年にアメリカで発売されたことは確かですが、開発には家族の試作や同僚の協力があったとされ、ほぼ同じ時期に別の人による特許出願もありました。発明者をひとりに絞るのは難しく、「何人もの工夫が重なって生まれた」と考えるのが実際に近そうです。
ルームウェアの話
「ネグリジェは、フランス王ルイ14世の宮廷の女性が考案した」
確かめられない
華やかな宮廷文化と結びつけて語られることの多い話ですが、言い伝えの域を出ません。「ネグリジェ」はフランス語で「くつろいだ、気を抜いた」といった意味の言葉に由来し、もとは室内でのくだけた装いを広く指していました。
「パジャマの起源は3000年前にさかのぼる」
確かめられない
ゆったりしたズボン型の衣服そのものは古くからありますが、「3000年前」という具体的な年数の根拠は見つかっていません。パジャマという言葉がペルシャ語・ヒンディー語の「脚の衣服」を意味する言葉に由来し、イギリスを経て寝間着として広まったことは確かです。詳しくはパジャマ・ルームウェアの歴史へ。
俗説が生まれやすい理由と、楽しみ方
下着は毎日身につけるのに、人目に触れにくく、使い終わると捨てられてしまう衣類です。そのため実物や記録が残りにくく、印象的なエピソードのほうが記録より先に広まりやすいという特徴があります。「世界初」「日本初」という言葉も、会社の宣伝や伝記の中で使われたものが、そのまま事実のように語り継がれることがあります。
歴史の話を楽しむコツ
- 「世界初」「日本初」と聞いたら、「最も有名な」に置き換えてみる
- 年号や数字がぴったりすぎる話は、出どころを気にしてみる
- 「確かめられない話」も、時代の空気を伝える物語として楽しむ
確かな出来事を年代順に並べた下着の歴史年表もあわせてどうぞ。
よくある質問
この記事の判定は確定したものですか?
いいえ。博物館や百科事典、特許の原本など、現時点で確認できた資料をもとにした判定です。新しい資料が見つかれば評価が変わる可能性があります。「確かめられない」は「誤り」という意味ではなく、裏付けとなる資料が見つかっていないという意味です。
なぜ下着の歴史には俗説が多いのですか?
下着は人目に触れにくく、日々使われて捨てられるため、実物や記録が残りにくい衣類です。そのため、印象的なエピソードが記録より先に広まり、くり返し語られるうちに事実のように扱われることがあります。
ブラジャーを最初に考えたのは誰ですか?
一人に決めることはできません。1914年にアメリカで取得された特許が近代的なブラジャーの原型として最も知られていますが、それ以前にも胸を支える下着の特許や考案があり、15世紀のものとされるカップ付きの下着も見つかっています。
白木屋火災の話はまったくの作り話ですか?
1932年の白木屋の火災で14人が亡くなったことは事実です。一方で「裾を押さえて墜落した」「それをきっかけにズロースが広まった」という部分は、研究者から作り話の可能性が高いと指摘されています。百科事典には普及のきっかけとする記述も残っており、評価が分かれています。
この記事に出てくる用語
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