2026.09.07
グンゼの底力|130年前は生糸の会社だった、日本の下着ブランドの中身
グンゼと聞いて思い浮かぶのは、人にはよりますが「無難な肌着」と思う人もいるかもしれません。実家のタンスに入っていた、白いシャツとブリーフ。悪くはないけれど、わざわざ選ぶブランドという感じはしない。
でも、そんなことはないんです!編集部一のグンゼ好きを自認する私が、中身を調べてみた結果、やっぱり印象がかなり変わりました。1896年に生糸の会社として始まった企業が、糸そのものを作り替えて、縫い目を消し、汗の抜け道を構造として設計している。しかもそれを、1枚1,000円台の定番でやっています。
この記事では、グンゼというブランドの技術と歴史をたどりながら、いまのメンズインナーのどこにその蓄積が効いているのかを整理します。読み終わったあとに、いつもの1枚を選び直すきっかけになれば十分です。
グンゼは「糸の会社」として始まった
01.1896年、京都の郡是製絲
グンゼの創業は1896年(明治29年)。場所は京都府何鹿郡、いまの綾部市です。創業時の社名は「郡是製絲株式会社」で、創業者は波多野鶴吉、初代社長は羽室嘉右衛門でした。
つまり出発点は下着メーカーではなく、生糸をつくる会社です。2026年で創業から130年になります。
グンゼの主な沿革(グンゼ公式サイトの沿革ページより)| 年 | できごと |
|---|
| 1896年 | 京都府何鹿郡(現・綾部市)に郡是製絲株式会社を創業 |
| 1946年 | 宮津工場でメリヤス肌着の生産を開始 |
| 1952年 | ナイロン製フルファッション靴下の生産を開始 |
| 1959年・1961年 | 梁瀬工場、久世工場を肌着事業に転換 |
| 1968年 | パンティストッキングの生産を開始 |
| 1987年 | グンゼシルクを解散し、創業以来の蚕糸業から完全撤退 |
注目したいのは1987年です。創業事業である蚕糸業から完全に手を引いています。生糸の会社が生糸をやめて、肌着の会社になった。
02.だから「糸」で戦っている
この経歴は、いまの商品の作り方に残っています。グンゼの新しい技術を並べていくと、生地の縫い方や形の話より先に、糸そのものをどうするかという話が出てきます。
たとえば後で出てくる「アセドロン」は、糸の芯と鞘を作り分けることで汗を処理する素材です。「NextRA+」は機能を持続させる一本の糸をつくるという発想から出ています。半世紀以上を糸に費やした会社の、いちばん得意な戦い方をしているわけです。
「快適工房」は商品名ではなく、研究所の名前だった
グンゼの定番として知られる「快適工房」。じつはこの名前、もともとは研究所の名前です。
公式サイトのブランドストーリーには、グンゼが京都府宮津工場内に肌着の生理学研究所「快適工房」を開設し、快適性を科学的に研究したと書かれています。研究の中身として挙げられているのは、着用圧測定や温湿度測定、そして脳波や心電図の生体信号分析です。
肌着の心地よさを、脳波と心電図で測る。ここが「無難な肌着」の裏側にあるものです。
公式が挙げている快適工房のこだわりは4つあります。
快適工房の4つの技術(グンゼ公式サイトのブランドストーリーより)| 技術 | 内容 |
|---|
| 高密度な強い生地 | 度目(生地の密度)単位で生地を研究 |
| 二段階漂白技術 | 白さと肌あたりのための独自の漂白工程 |
| 耐久柔軟加工 | 100回洗濯した際の繊維の傷み具合まで電子顕微鏡で検証し、洗ってもごわつきにくく仕上げる |
| アルゴフォルムカット | 独自の「ゆったり設計」による立体裁断 |
とくに3つめ、100回洗濯したあとの繊維を電子顕微鏡で見るという検証は、下着の評価軸としてかなり珍しいものです。買った瞬間の気持ちよさではなく、100回洗ったあとの気持ちよさを設計している。
快適工房は「快適なきごこち×綿100%×日本製」という価値を守り続けてきたブランドで、25年以上にわたって選ばれ続けていると公式サイトに記されています。
グンゼ 快適工房 半袖 丸首 Tシャツ メンズ インナー 綿100% 4Lサイズ クルーネック 抗菌防臭 大きいサイズ GUNZE(¥2,178):快適工房の半袖丸首Tシャツ(4Lサイズ)。綿100%・日本製・抗菌防臭の定番で、大きいサイズをお探しの方向けの品番です。ゆったり設計なので、体を締めつけない着心地を探している人に向きます。
快適工房には半ズボン下などのボトムスもあり、こちらも綿100%・日本製です。ズボン下を「肌着として」きちんと選びたい方は合わせて見てみてください。
縫い目を消す:カットオフと完全無縫製
01.襟・袖・裾から縫い目をなくす「CUT OFF®」
インナーを着ていて気になるのは、たいてい生地ではなく縫い目です。首の後ろが当たる、裾のラインがシャツに出る、脇の縫い代が擦れる。
グンゼの「CUT OFF®」は、この縫い目そのものを減らす仕様です。公式サイトには、襟・袖・裾に縫い目がないと書かれており、「襟・袖・裾から縫い目がなくなることで、まったく新しい着心地を手に入れた」と説明されています。
しかも上位タイプの「SEAM OFF」では、肩と脇の接合部からも縫い目が無くなっており、これは「完全無縫製®」として商標登録されています。
グンゼ YG カットオフ VネックTシャツ メンズ インナー GUNZE ワイジー 定番 大きさサイズ(¥1,496):YGのカットオフVネックTシャツ。襟・袖・裾に縫い目がないタイプで、シャツの下に着たときにラインが出にくいのが特徴です。当社でも在庫を厚く持っている定番です。
グンゼ YG カットオフ クルーネックTシャツ メンズ GUNZE ワイジー 定番 大きさサイズ(¥1,496):同じカットオフのクルーネックTシャツ。Vネックが苦手な方、Tシャツやポロシャツの下に着る方はこちらが合います。
カットオフには、縫い目のない仕様に暑い時期向けの生地を組み合わせたクールタイプもあります。季節でシリーズを替えても、肌当たりは同じ設計のまま使えます。
02.寒い時期はカットオフのまま発熱綿へ
カットオフは夏物の技術という印象がありますが、秋冬向けのシリーズにも展開されています。肌当たりの良さは季節を問わないので、寒い時期に厚手のインナーへ変える人ほど効きます。
グンゼ YG NextRA+ カットオフ Vネック ロングスリーブシャツ メンズ 発熱綿 インナー GUNZE ワイジー ネクストラ(¥1,617):YG NextRA+のカットオフVネックロングスリーブ。発熱綿を使った秋冬向けで、縫い目のない仕様のまま暖かさを足せます。これからの季節の1枚目に。
首元を出したくない人には、同じNextRA+カットオフのクルーネックタイプもあります。
汗の悩みを「構造」で解く:in.Tとアセドロン
01.Tシャツ専用インナーという発想:in.T
Tシャツ1枚で過ごす季節に困るのは、脇汗のシミ、背中のべたつき、そして白いTシャツからインナーが透けること。グンゼのYGには、この状況だけを狙った「in.T(インティー)」というシリーズがあります。
公式サイトでは、汗のシミ、べたつき、ニオイ、肌の透けというTシャツスタイルの悩みを解決するインナーと説明されています。仕様は、縫い目のないカットオフ、脇汗を受ける汗取りパッド、白Tから透けにくいベージュやオレンジの色、そしてボトムスに入れられる長めの着丈です。
性能面で公式が挙げている数字は次のとおりです。
in.Tについてグンゼ公式サイトが挙げている数値| 項目 | 公式の表記 |
|---|
| 生地の重さ | 生地は25%軽量 |
| 乾き | 乾燥時間を65%短縮 |
| 汗取りパッド | 吸水量も3.3倍にアップしました |
「汗を吸う」だけなら綿でもできます。in.Tが狙っているのは、吸ったあとに早く乾かして、シミにも冷えにも進ませないという部分です。
なおYGのブランドページには、累計出荷数量が1,800万枚を超えたという記載があります。定番として売れ続けている系統であることは数字にも出ています。
グンゼ GUNZE ワイジー YG インティー in.T タンクトップ 汗取りインナー 脇汗対策 クルーネック カットオフ スリーブレス(¥1,584):in.Tのタンクトップ(汗取りパッド付き・クルーネック・カットオフ)。当社の本店でもっとも動いているグンゼのメンズインナーがこれです。まずTシャツの下に1枚試すなら、ここから始めるのが分かりやすい。
グンゼ GUNZE ワイジー YG インティー in.T タンクトップ 汗取りパッド強化 脇汗対策 三層構造 日本製 YV2819(¥1,584):in.Tのタンクトップで、汗取りパッドを強化した三層構造タイプ。日本製です。脇汗の量が多めの方、白いTシャツを着る機会が多い方はこちらを。
グンゼ GUNZE ワイジー YG カットオフ インティー in.T クルーネック 半袖 Tシャツ インナー 脇汗 汗取りパッド付き メンズ(¥1,760):in.Tのクルーネック半袖Tシャツ(カットオフ・汗取りパッド付き)。ノースリーブでは脇汗を受けきれない人向けで、半袖なら袖のラインで汗を止められます。
グンゼ GUNZE ワイジー YG インティー in.T ボートネック対応 8.5分袖 ロングスリーブシャツ メンズ 汗取りインナー 脇汗対策(¥1,848):in.Tのボートネック対応・8.5分袖ロングスリーブ。襟の開いたTシャツやニットの下でもインナーが見えにくい設計です。
02.珪藻土に着想を得た素材:アセドロン
もう一つが「アセドロン」です。グンゼはこれを、吸水力に優れる珪藻土の自然パワーに着想した多孔質構造の独自開発素材と説明しています。目に見えない無数の隙間が、衣服内の湿気を素早く吸い込んで吐き出す構造です。
糸の作り方まで踏み込んでいるのがこの素材の特徴です。レーヨンとドライ感の強いポリエステルの混紡で、糸の芯部のレーヨンには吸放湿性を高める物質を結合させ、鞘部には空隙をつくって水の通り道を確保している、と公式は説明しています。
冒頭で「糸の会社だった」と書いたのは、まさにこういうことです。生地の縫い方ではなく、糸の断面から設計している。
アセドロンは2024年の発売初年度でシリーズ累計120万枚超を達成し、2025年3月からVer.2が販売されています。Ver.2では、汗ジミ対応素材をアセドロンの生地で挟み込んだ三層構造の汗取りパッドを搭載した大汗対策商品が加わり、そのパッド面積はメンズ鹿の子商品との比較で従来の約3倍以上とされています。
グンゼ GUNZE アセドロン Vネック Tシャツ 鹿の子 半袖 インナー メンズ(¥1,320):アセドロンの鹿の子Vネック半袖Tシャツ。当社でいちばん動いているアセドロンのメンズインナーがこれです。シャツの首元からインナーを見せたくない人はVネックを選んでください。
グンゼ GUNZE アセドロン 鹿の子 クルーネック Tシャツ 半袖 インナー メンズ(¥1,320):同じアセドロンの鹿の子クルーネック半袖Tシャツ。Vネックが苦手な方、Tシャツの下に着る方はこちらが合います。汗の多い時期に何枚か回す前提でも負担にならない価格帯です。
グンゼ アセドロン スリーブレスシャツ 汗取り付き 大汗 Vネック メンズ GUNZE(¥1,672):アセドロンの大汗対策スリーブレスシャツ(汗取り付き・Vネック)。Ver.2で加わった大容量パッド系のアイテムで、脇汗が本気で悩みという方はここまで来る価値があります。
底力はどこに出るか。まず1枚選ぶならこれ
01.用途から逆算する
技術名を覚える必要はありません。困っている場面から選べば、だいたい正解にたどりつきます。
シリーズ名をタップすると、そのシリーズのメンズ商品の検索結果が開きます。
02.迷ったらここから
グンゼの底力がいちばん分かりやすいのは、実は高機能シリーズではなく、いちばん普通の定番かもしれません。綿100%で、価格は1,000円前後。それでも100回洗ったあとを検証している会社が作っている、という前提が効いてきます。
グンゼ GUNZE ワイジー YG コットン100% スタンダードブリーフ 前あき メンズ 定番 ベーシック オールシーズン(¥792):YGのコットン100%スタンダードブリーフ(前あき)。長く売れ続けている定番で、迷ったときの基準になる1枚です。まとめ買いしやすい価格帯でもあります。
グンゼ GUNZE ワイジー YG コットン100% Vネック Tシャツ メンズ 定番 ベーシック オールシーズン(¥968):YGのコットン100%VネックTシャツ。オールシーズン使える定番インナーで、まずは綿100%の基準を体感したい人向けです。
グンゼ GUNZE ワイジー YG ボクサーブリーフ メンズ 綿100% 前あき 抗菌防臭 立体設計 尿ジミ対策(¥1,144):YGの綿100%ボクサーブリーフ(前あき・抗菌防臭・立体設計)。ブリーフからボクサーに変えたい人の乗り換え先として選びやすいアイテムです。
「無難」は、実は簡単に作れるものではありません。糸から作り替え、縫い目を消し、100回洗ったあとまで測る。それを1,000円台の定番でやり続けているところが、グンゼの底力なのだと思います。
いつものインナーを買い替えるタイミングで、シリーズを一段変えてみてください。同じ「グンゼの肌着」でも、中身はだいぶ違います。